法律相談コラム(6月分)

◆◇試用期間後の本採用拒否◆


Q 今春に採用した従業員の勤務態度が悪く,また採用時の履歴書に記載されていた保有資格の一部が更新されておらず,失効していたことが分かりました。試用期間の満了時に,本採用を拒否したいと考えていますが,何か問題はあるでしょうか?

A まず注意すべき点は,試用期間中であっても,基本的には雇用関係ですので,本採用拒否は「解雇」にあたる,ということです。ただし,通常の解雇よりは,条件が緩やかとなります。
  多くの企業では,新規採用時に,数ヶ月間の試用期間を設けて,期間中に問題がなければ本採用に移行する,としています。試用期間を設ける場合は,就業規則上に定めを置く必要があります(法律上の義務ではありませんが,就業規則上に試用期間の定めがない場合は,裁判上争いになった場合に,試用期間の存在自体が認められず,単なる解雇であるとされる可能性が非常に高くなります)。
  この試用期間は,法的には,解雇の可能性を留保した労働契約である,と考えるのが通説かつ判例です。したがって,試用期間中に,既に雇用契約は成立しています。本採用時にはじめて雇用契約が成立するわけではありません。
  したがって,本採用を拒否する場合は,その旨を明示的に意思表示し,かつ,その理由を示す必要があります(本採用拒否の意思表示をしなければ,当然に本採用に移行したことになります)。
  本採用拒否は解雇の一種であるため,法律上,「客観的に合理的な理由」があり,「社会通念上相当として是認されうる場合であること」が必要となります。
  上記の条件は,通常の解雇よりは緩いものとなりますが,具体的には,「企業側が,採用後の調査や,試用期間中の勤務態度によって,採用時には知ることができなかった(知る方法がなかった)ような事実が判明し,客観的に,当該従業員を引き続き雇用することが適当でないと判断せざるを得ないこと」が必要です。
  勤務態度の不良は,主観的な評価になりやすいので,本採用拒否の理由としては争いになりうると思われますが,例えば,募集時に必須としていた資格が,更新されておらず失効していたことが後で判明したような場合には,本採用の拒否も認められやすいと考えられます。
  いずれにせよ,争いとなることを避けるため,本採用拒否の意思表示は書面で行い,その具体的な理由も明示することが,重要です。
  
  試用期間後の本採用拒否の可否は,個別の事情ごとに検討する必要がある問題ですので,実際の事例についての判断については,専門家に相談することをおすすめします。

(注)本コラムは,個別の事案についての結論を保証するものではありませんので,その点ご留意のうえ,具体的な事案について疑問がある場合には専門家にお尋ねください。


〒848−0041 佐賀県伊万里市新天町615−1
弁護士法人いまり法律事務所 弁護士 圷悠樹【文責】


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