法律相談コラム(5月分)

◆身元保証人の責任◆

Q 従業員が犯罪にあたる不正行為(横領)を行っていたことが発覚し,懲戒解雇としました。従業員本人に対して会社の被った損害賠償を請求したいのですが,これから刑事裁判を受ける状況なので,本人には支払能力がなさそうです。身元保証人に請求することができるでしょうか?

A 請求できるかどうかは,具体的な事実関係を見る必要があります。
  被用者(従業員)の行為により使用者が受けた損害を,身元保証人が賠償することを約することを,「身元保証契約」といいます。
  身元保証契約については,「身元保証に関する法律」が次のルールを定めており,同法よりも身元保証人に不利となる契約をすることはできません。
(1)身元保証人が責任を負う期間は,契約上定めがない場合は3年,定めがある
場合でも上限が5年となる(合意により期間を更新することは可能だが,更新期間の上限も5年となる)
(2)使用者は,次の事由があった場合には,その旨を遅滞なく身元保証人に通知
しなければならない
(顱鉾鑞兌圓業務上不適任または不誠実と見るべき事実があり,身元保証人に責任が発生するおそれがあると判明した場合
(髻鉾鑞兌圓稜ぬ海泙燭惑っ呂鯤儿垢掘い修譴砲茲蠖噺喫歉攷佑寮嫻い加重
され,または身元保証人の被用者に対する監督が困難となる場合
(3)身元保証人は,(2)の通知を受けたときは,将来に向かって身元保証契約を解除できる(既に生じた責任は免れない)
 したがって,身元保証契約の存続期間<→(1)>を経過している場合には,身元
保証人に請求する余地はないことになります。
  また,身元保証人は,必ずしも,使用者の被った損害の全額の賠償責任を負うとは
限りません。
すなわち,身元保証に関する法律は,
(4)裁判所は,身元保証人の負う責任及び賠償額について,被用者の監督に関す
る使用者側の過失の有無,身元保証人が身元保証契約をした経緯,被用者の任務または身上の変化その他一切の事情を考慮して定める
と規定しており,訴訟手続での争いとなった場合には,使用者側の監督上の過失の有無その他一切の事情により,裁判所が,身元保証人の責任の範囲を定めることになります。
  なお,被用者本人に損害賠償責任が生じない場合(無過失の場合など)には,当然,身元保証人に対しても損害賠償を請求することはできません。

  身元保証人の責任は,個別の事情ごとに検討する必要がありますので,請求をお考えの場合には,事前に専門家に相談することをおすすめします。

(注)本コラムは,個別の事案についての結論を保証するものではありませんので,その点ご留意のうえ,具体的な事案について疑問がある場合には専門家にお尋ねください。


〒848−0041 佐賀県伊万里市新天町615−1
弁護士法人いまり法律事務所 弁護士 圷悠樹【文責】


プリンタ出力用画面
友達に伝える



投稿された内容の著作権はコメントの投稿者に帰属します。