法律コラム

◆業務委託:雇用と請負の区別


Q 社員でない個人の方に,業務を依頼したいと考えています。依頼は個別の仕事ごとに行うことを想定しており,雇用と見られて社会保険等の負担が生じるのを避けたいのですが,どのような点に注意すればよいでしょうか。

A基本的に,請負の相手方は,雇用とは異なり,独立した事業主です。業務委託にあたって,雇用と評価されるのを避けるためには,業務委託先に事業主としての独立性を認めることが重要となります。

 さて,業務の依頼先が個人である場合,形態によっては,雇用か請負か,区別がかなり微妙になることがあります。例えば,専属下請・1人親方の場合,あるいは車両を自身で持ち込んで運送業務に従事するいわゆる傭車契約の運転手の場合などは,裁判上,雇用か請負かが争いになった事例があります。
 雇用と請負の区別が問題になる場合,法的には,契約上の名目ではなく,業務従事の実態が基準となります。したがって,契約上「業務委託」や「請負」としておけば,雇用に該当しないというわけではありません。
 区別の基準として最も重要なのは,(1)業務従事に対する指揮監督の有無,(2)業務従事の対価としての報酬の有無,の2点です。
  (1)は,業務の依頼について相手方に応否の自由があるか,個別の業務についての指揮監督の有無,勤務時間・勤務場所の管理や拘束の程度,相手方が代替要員に業務を行わせることが禁止されているか,などによって判断されます。
  (2)は,報酬が(業務に従事した時間ではなく)完成させた仕事の量や質をもとに計算されているか,欠勤や残業をした場合にも報酬の控除や手当の支給を行わないか,などによって判断されます。

  さて,以上をもとに整理すれば,まず,業務委託に関する基本契約書を作成すべきです。契約書の中で,個別の業務について裁量を認めること,機材等は自己負担で用意すべきこと,代替要員を使ってよいこと,勤務時間を管理しないこと,報酬を時間ではなく仕事単位で定めること(出来高制・歩合制など),残業手当の類を設けないこと,などを定めておくことが重要です。
  また,基本契約書とは別に,個別の業務の依頼にあたっても,その都度,別途書面を作成し,相手先に依頼に対する応否の機会を与えるべきです。
  最後に,実際の業務において,一般社員と明確に異なった,独立の事業主としての裁量を認めておくことも,重要です。

  いずれにしても,雇用と請負の区別は,業務委託の形態によってはかなり微妙な判断になってきます。社会保険労務士や弁護士などの専門家に個別に相談しつつ,慎重に検討するようにしてください。

(注)本コラムは,個別の事案についての結論を保証するものではありませんので,その点ご留意のうえ,具体的な事案について疑問がある場合には専門家にお尋ねください。


〒848−0041 佐賀県伊万里市新天町615−1 弁護士法人いまり法律事務所 弁護士 圷悠樹【文責】

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